はじめに

株式会社J・3Dでは医療機器の開発に取り組んできました。当初は64チタンでの開発に取り組んできましたが、金属3Dプリンター(レーザー積層造形)で造形した64チタンは金属組織のでき方が、あまり好ましい状態ではなく(針状組織)延びが非常に小さいことがわかりました。
そこで弊社ではより人体適合性の高い「純チタン」に目を向けてテストをしてまいりました。
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純チタンと64チタンの違い

純チタンは64チタンに比べ強度的にはかなり劣ります。引張強度(金属3Dプリンター造形品データー)を見れば純チタンでは660Mpaですが、64チタンでは1230MPaになりますので約半分しかありません。
降伏強度についても純チタンは560MPa、64チタンは1060MPaです。
しかし、破断伸びを見てみると
純チタンは22%に対し、64チタンは10%と低くなっています。
左上写真は64チタンを引っ張った時のデーターですが、強度は強いのですが、延性が無いためプチンっと切れてしまいます。
人体の中では強度も大事ですが、「しなり」というものも大事になりますので、硬すぎて延びの無い
64チタンは向いていないという結論になりました。
一方純チタンは圧延材と変わらない性質をもっており、柔軟性、人体適合性にも合致しております。
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- 純チタン造形品引張強度
- 純チタン圧延材引張強度
- バージン材
- 再利用材
造形品強度

造形した人工股関節(寛骨臼)を圧縮試験を試みた。
試験方法として寛骨臼に荷重を負荷する圧縮試験。
一般的に人工股関節には最大で人間の体重の数倍の荷重がかかると言われるため、安全率を見込み最大10kN(約1トン)の荷重で圧縮試験を行った。
結果30kN(3トン)まで変形もなかった。
インプラントとして

弊社が開発しているのは人工股関節の寛骨臼側のカップになりますので、引張強度はあまり関係ありません。むしろ骨や筋肉、血液、体液に触れる部分になりますので生体適合性の優れた材料(純チタン)のほうが向いています。
しかし、体液に触れた部分で金属3Dプリンター造形した金属が溶けだしてこないのかは検査しなければなりません。
それが溶出試験です。
溶出試験前には蛍光X線にて表面に違う成分がついていないかを確認したうえで試験機関に依頼しました。
◆溶出試験の実施
(社)日本食品分析センターに手配、分析方法はJIS T 0304:2002「金属系生体材料の溶出試験方法」に準ずる試験を実施した。
◆溶出溶媒:1 mol/L塩酸+0.9 %塩化ナトリウム(pH=2.0)
溶出割合:検体の表面積6 cm2当たり溶媒50 mL
溶出温度及び時間:37 ℃,7日間
◆溶出試験の結果
元素の定性試験と定量試験を実施した結果、有害な成分は検出されなかった。
まとめ

今回は医療機器に関するお話になってしまいましたが、圧延材より硬くなる64チタンも考え方を変えれば使い道があるはずです。
硬い方がよい使い方、延びない方がよい使い方なども模索できれば新たな使用方法があるのかもしれません。
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